起案理由が思いつかない
「困っていること」から整理しよう
起案理由が思いつかないときは、最初から文章を完成させようとせず、「現状→必要な対応→期待する効果」の順で情報を整理することから始めましょう。
最初から文章にせず、現状・必要な対応・期待する効果を書き出す
まずは、「現状は[課題]があり、[業務への影響]が生じています。これを改善するため[施策]を申請します。[根拠]に基づき、[効果]を見込んでいます」という型に当てはめます。数値や根拠が分からない部分は無理に埋めず、空欄のまま調査項目として残しましょう。契約更新日など実施時期に明確な理由がある場合は、期限も加えます。
起案理由は「なぜ必要か」、目的は「何を実現するか」
起案理由は「なぜ必要なのか」、目的は「何を実現したいのか」を示します。たとえば「PCを買う」は実施内容、「処理待ちを減らす」は目的、「処理待ちが毎日発生している」は起案理由の材料です。書式によっては目的と理由が一つの欄にまとめられている場合もあるため、自社の様式に合わせて整理しましょう。
| 用語 |
意味 |
| 起案 |
施策や購入などを提案すること |
| 稟議 |
提案内容を関係者に回覧し、承認を求める手続き |
| 決裁 |
最終的な権限者が承認・決定すること |
|---|
起案理由を見つける5つの質問
いま誰が、どの業務で困っている?
最初に、困っている人と業務を具体化します。担当者、作業内容、発生頻度、どのような条件で問題が起きるのかを書き出しましょう。情シス担当者自身の不便だけでなく、利用部門の作業が止まる、問い合わせが増えるなど、周囲への影響まで確認すると必要性を説明しやすくなります。
実施しなかった場合、どんな影響がある?
対応しない場合に起きる影響も整理します。作業の遅延、修理対応の増加、既存システムを使い続けることによる負担など、実際に確認できる事実を挙げましょう。一方で、「大きな損失が発生する」など、発生確率や根拠が分からない影響を断定して書くのは避けます。
なぜ今、対応する必要がある?
契約更新日、新しい業務の開始時期、故障回数の増加など、「今対応する理由」になる事実を確認します。期限がある場合は具体的な日付や時期を示すと伝わりやすくなります。急ぐ根拠がない場合は、承認を得るためだけに緊急性を作る必要はありません。
修理・既存機能の活用など、ほかの方法では解決できない?
購入や新規導入だけでなく、修理や既存機能の活用など、別の方法も検討します。それぞれの費用、解決できる範囲、運用負荷を比較すると、「なぜこの案を選ぶのか」を説明しやすくなります。比較した結果も起案理由を裏付ける材料になります。
費用に対して、どんな効果を説明できる?
作業時間、ミス、問い合わせ件数、継続費用などから、費用に対して期待できる効果を整理します。その際は、すでに確認できている実績と導入後の予測を分けて記載しましょう。
ここまで挙げた5つの質問への回答を一つのワークシートにまとめ、その内容から必要な部分を起案理由欄へ移します。
用途別に使える起案理由の例文
物品購入・PCの買い替え
「古くなったため」だけでは、承認者は買い替えの必要性を判断しにくくなります。不具合の状況や対象業務への影響、更新によって何が改善するかまでつなげて書きましょう。
【穴埋め例】
現在使用している[機器名]は、[不具合]が[頻度]発生し、[対象業務]に[影響]が生じています。業務への影響を改善するため、[機種・数量]への更新を申請します。
【記入例】
現在使用している営業用ノートPCでは、起動や処理に時間がかかる状況が続き、顧客情報の入力や資料作成に待ち時間が発生しています。業務を安定して行える環境を整えるため、対象PC5台の更新を申請します。
システム導入・業務の効率化
システム導入では、「便利になる」ではなく、現在のどの工程に負担があり、導入によって何が変わるのかを示します。
【穴埋め例】
現在、[業務名]では[件数]件の処理について、[入力・回付・転記などの工程]を手作業で行っています。[具体的な負担]が発生しているため、[システム名・施策]を導入し、[改善する工程]の効率化を図ります。
【記入例】
現在、備品購入の申請はExcelで作成し、メールで承認者へ回付した後、管理台帳へ転記しています。申請状況の確認や転記に手間がかかっているため、ワークフローシステムを導入し、申請から承認、履歴管理までを一元化します。
導入後に必要となる設定変更や利用者管理などの運用作業も確認しておきましょう。
契約更新・継続利用
契約更新では、「前年も使っていたから」ではなく、利用実績や継続する必要性、契約条件の変更、代替案を整理します。
【穴埋め例】
[サービス名]は[期間]に[利用実績]があり、[対象業務]で継続して利用する必要があります。今回の更新では[契約条件の変更点]を確認し、[代替案]とも比較したうえで契約継続を申請します。
【記入例】
勤怠管理サービスは全社員が日常的に利用しており、給与計算に必要な勤務データの集計にも使用しています。次年度も継続利用が必要なため、契約条件と他サービスへの切り替えに伴う作業を確認したうえで更新を申請します。
前回の文章を使う場合も、利用状況や金額などは最新情報へ更新してください。
設備修理・人員補充
設備修理では不具合と業務への影響を示し、修理と更新を比較します。
【修理例】
複合機で紙詰まりが繰り返し発生し、帳票出力のたびに作業が中断しています。保守会社の点検結果と修理見積もりを確認したうえで、業務への影響を解消するため修理を申請します。
人員補充では、業務量と必要な役割を中心に説明します。
【人員補充例】
問い合わせ対応件数の増加により、既存担当者だけでは通常業務と並行した対応が難しい状況です。現在の業務量と担当範囲を整理し、問い合わせ対応を担う人員1名の補充を申請します。
自社情報へ置き換える際は、修理見積書や業務量の記録など、判断の根拠となる資料を用意しましょう。例文をそのまま提出するのではなく、実際の状況に合わせて修正してください。
説得力が弱い起案理由を直すポイント
「便利になる」「必要だから」を業務上の変化に置き換える
「業務効率化のため」「必要だから」といった表現だけでは、承認者が必要性を判断しにくくなります。対象となる作業、現在の課題、実施後にどう変わるのかまで具体化しましょう。
| 悪い例 | 不足している情報 | 改善例 |
| 業務効率化のため申請します。 | 対象作業・現状・改善内容 | 申請書の入力から承認までを一元化し、手作業による転記と進捗確認の負担を減らします。 |
数字には根拠を添え、試算と実績を区別する
数字を示す場合は、「1件あたりの削減見込み時間×月間件数」のように計算過程を示します。あわせて、入力した数値の出典や測定期間、前提条件も明記しましょう。
実測した数値と導入後の試算は区別し、承認を得るために根拠のない数字を作ってはいけません。数値化しにくい効果については、現在確認できる状況、および導入後の確認方法を示します。
承認者が気にする費用・代替案・リスクに答える
起案理由だけでなく、費用や代替案、導入時のリスクなど、会社側が判断するために必要な情報もそろえます。理由欄には要点を記載し、詳細は見積書や比較表、調査メモなどへつなげましょう。
なお、起案理由の文章だけで承認が決まるわけではありません。当然ながら予算や社内規程、決裁基準なども承認の判断材料になります。
それでも起案理由が書けないときの対処法
過去の承認済み稟議と差し戻し理由を確認する
同じ種類の案件で過去に承認された稟議書があれば、どのような情報が求められていたかを確認します。もちろん、契約条件や金額、実施時期までそのままコピーするのではなく、現在の内容に更新しましょう。
差し戻しの理由が分からなければ、承認者に必要な判断材料を確認してください。
依頼部門や上司に必要性を確認する
自分だけで起案理由を整理できない場合は、実際にその業務を行う部門へ、現在どのような問題が起きているのか、いつまでに対応が必要なのかを確認します。また、上司には申請の必要性や優先順位、ほかの方法で対応できないかを相談すると、起案理由に必要な情報を整理しやすくなります。
必要性そのものを説明できない場合は、理由を無理に作るのではなく、申請内容を見直すことも必要です。
AIを使う場合は、事実の整理と表現の調整を依頼する
AIを補助的に使い、集めた事実を文章に整理する方法もあります。たとえば「以下の事実だけを使って起案理由を整理し、不足している情報は質問として示してください」と指示すれば、情報の不足も確認できます。
なお、AIを利用する際は社内で認められた環境を使い、入力できる情報の範囲を確認しましょう。出力された数値や因果関係、断定表現については、必ず人が点検します。
起案理由に関するよくある質問
起案理由は短い文章でもよい?
短い文章でも、承認者が必要性を判断できる情報がそろっていれば問題ない場合があります。必要な分量は社内の書式や案件によって異なるため、一律の文字数を基準にするのではなく、現状の課題や必要な対応、根拠が伝わるかを確認しましょう。
金額の小さい購入でも、詳しい理由が必要?
どの程度の説明が必要かは、自社の決裁基準や稟議規程によって異なります。少額だから詳細な理由が不要とは限りません。また、すべての会社で同じ金額基準が設けられているわけでもありません。自社の決裁権限や申請ルールを確認して、必要な内容を記載しましょう。
起案理由の締めの言葉はどう書けばよい?
「以上の理由から、○○の承認をお願いいたします」のように、申請内容を簡潔に示して締めると自然です。
ただし、定型的な結びの言葉を加えても、理由や根拠の不足を補うことはできません。本文で必要性や判断材料を具体的に示したうえで結びを添えましょう。
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